2016年5月5日木曜日

民進党の結党の意義、野党共闘の意義とは 〜自民党と民進党の比較〜

 2016年7月に参議院選挙が予定されているなか、私たちは選挙に向け自分の支持政党を決めなければなりません。支持政党の選択に際し大切なことは、状況により刻々と変わる個々の具体的政策そのものよりも、各政党の基本的な政治理念や立ち位置をよく見極めることだと思います。
 その点、欧米の各政党や各政治家は、基本的な政治思想が左派右派に分かれており対立軸がはっきりしています。
 しかし日本においては、政治思想に関し、「脱官僚」「道州制」の議論に見られるように、欧米にない統治機構に関する対立軸も存在しています。そのため、各政党の政治思想に関する立ち位置が分かりづらくなっています。また、旧民主党、旧維新、旧みんなが統一し新たに民進党が誕生したものの、各方面において民進党の政策理念がわかりづらいとの指摘があります。

 そこで今回は、自民党と民進党の基本的な立ち位置を2つの対立軸から分析してみました。


◯対立軸その1 「左派(集団利益優先)」 VS 「右派(個人利益優先)」
 従来から認識されている対立軸です。左派は、個人の利益より社会全体の利益を優先します。社会全体の利益を優先することから個人の権利や自由を制限することもあります。また、政府が社会に貢献できると考え、政府に多くの役割を求めることから大きな政府を指向します。一方右派は、社会の利益より個人の権利や自由を尊重します。大きな政府にこそ問題があると考えることから、個人の自律を前提に小さい政府を指向します。
 アメリカにおいては、民主党が左派、共和党が右派とされています。日本においては、自民党は、雇用慣行の改革や行政の民営化など右寄りの政策をする一方で、農業保護や国民皆保険など左寄りの政策も行い、左右に分類できないことから中道とされています。一方、民進党は、旧民主党が左派、旧みんなと旧維新が右派と整理することもでき、政策理念が党内において集約されていないなか、これまた左右に分類できません。


◯対立軸その2 「権威主義」 VS 「民主主義」
 権威主義は、エリートによる統治を絶対と見なす考え方です。エリートの中のエリートがトップになれば良いと考えます。そのため情報開示に積極的ではありません。古来から東アジアでは、中国の影響を受け「儒教の徳」や「道化の徳」のある人が政治的選択をし統治することで社会がより良くなると考えられてきました。そのため「徳」は統治者に求められる基本的な資質とされてきました。そこで、徳のある人を頂点にエリートを組織し官僚機構が生まれました。権威主義のメリットは、国民が政策に積極的に関与する必要がないので、「国民にとって楽ちん」ということです。
 一方で民主主義は、権威やエリートの過ちを認識し、国民の合議によって政治的選択を決める考え方です。そのため、選挙による国民の選択を重要視します。国民が選挙によってトップを指名し、トップが行政官をかき集めます。民主主義のメリットは、国民が政策に積極的に参加できることから、「国民が選択できる」ということです。
 中国においては、学業優績なエリートだけが共産党に推薦入党できます。日本においても、東大法学部を卒業し国家公務員試験に合格したエリートだけが官僚機構に入省できます。中国共産党と日本のキャリア官僚組織は、選挙の洗礼を受けないエリート集団・権威主義という点で似ています。欧米においては、フランス革命以来、人々の合議により政治的選択をするようになり、また行政官を政治任用するようになり、民主主義へと発展しました。
 自民党は、エリート官僚による中央集権体制の維持を前提としていることや、行政情報の非開示を容認することから、相対的に権威主義と言えます。一方民進党は、旧民主党が脱官僚を、旧みんながキャリア官僚・人事院の改革を、旧維新が地方分権をそれぞれ理念としていたことから脱権威主義だったと見ることができ、結党により民主主義を促進しようとしていると言えます。なお、民進党を頼りないと見る向きもありますが、権威主義を是とする元人事院法においては、キャリア官僚と協調することができずやむおえない状況です。法整備などにより変えることは可能です。
 現在日本では、古来からある中国的な権威主義(官僚主義)を指向する考えと、欧米的な民主主義を指向する考えが、対立軸として存在しているのです。


◯以上の二つの対立軸を図にまとめると、以下のようになります。



◯まとめ
 民進党に対し政策方針が党内において一致していないとの指摘は、民進党の左右に広い構成員に原因があると分かります。その点、自民党も先に指摘のとおり左右に広い政策を実行しています。そのため、水平軸で自民と民進を比較しても違が分かりません。
 しかし、縦軸で見ると、民進党の結党の意義が「日本の民主主義の促進」であることを改めて確認できます。また、自民党と民進党の政治思想に関する対立軸もはっきりします。

 日本の統治に関し「権威主義」を堅持するのか「民主主義」を促進するのか、この点が最も本質的な論点です。民進党の結党によりその論点がはっきりしました。

(おしまい)

追伸。
選択するのは私たち国民です。7月、選択しに投票に行きましょう。なお、投票権の放棄は、暗黙に民主主義を否定し権威主義を肯定することになります。


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