2013年9月22日日曜日

日本が輸出で経済成長できない理由 〜「貿易黒字が善」という考えの間違い〜


多くの経済論者は、貿易収支に関し「黒字を善」「赤字を悪」と受け止めています。そのため、新聞やテレビは、「貿易赤字により富が流出している」と報道しています。しかし、冷静に考えると、「為替」による富の移転はできないため、その考え方が間違っている事に気づきます。

◯極端な例を仮定し具体的に考えてみます。
ある小国があり、人口はわずか1万人、資源は豊富にあり、輸入は不要な状況とします。その小国のある企業が、デジカメを生産し販売を計画します。この企業が生産ラインのロボット化に成功して100万台生産できました。しかし、国内において、販売台数は1人に1台販売できるとしても1万台までしか見込めません。売上高も1台あたり10万円なら10億円です。そのため輸出により利益を伸ばしたいと考え、生産余剰の99万台をめでたくアメリカで1台あたり1千米ドルで売りさばき、9億9千万米ドルを得たとします。

◯この小国の企業は、はたして儲かったのでしょうか。
輸入ゼロの国の国民は、海外で買い付けをしないため、海外通貨を必要としません。そのためそのような国において、外国為替取引が成立せず、輸出企業は海外通貨を国内通貨に換金できません。つまり、この企業が手にした9億9千万米ドルは、国内において、価値のない紙切れにすぎません。アメリカへの輸出は、この企業の利益に貢献しないのです。働き損だったことが分かります。以上を一般化すると、企業は、輸出超過による利益を、外国為替取引に制限されることから得られないことが分かります。

◯なぜこんなことが起こるのでしょうか?
端的にいうと、各国が通貨の交換に際し通貨価値を「変動制」にしてしまったからです。そのため、輸出により得られる対価の上限額が輸入額に制限されるのです。

つまり、変動制の外国為替取引を採用した国において、輸出額は輸入額に制限されるため、貿易収支を「黒」にできません。「通貨」による富の移転はできないのです。できないこと(貿易黒字)を「善」とする考えは、そもそも間違いといえます。

ps.日本の貿易収支は、8月統計値で1兆円近くの赤字でした。しかし、GDP(500兆円)からみると、わずか0.2%の値であり誤差と言えます。貿易収支云々という議論は、無意味です。
(参考) 貿易統計 
     http://www.kanzei.or.jp/toukei/statotal.htm

(おしまい)