2012年2月6日月曜日

地デジ政策に見る行政の罪


シャープ社の2011年上期(4~9月)業績は、売上が対前年△13%、純利益が△398億円と厳しい内容でした。決算内容を事業別に見ると、テレビ事業の落ち込みが大きく影響したことが分かります。私は、最終責任は経営陣にあるものの、行政の対応にも問題があったと考えています。

○シャープ社の決算
2011年上期の上売を見ると、2010年度と比べ、1,503十億円から1,314十億円へ大幅に低下しました。落ち込みの大きかった分野は、国内におけるAV・通信機器と海外における液晶です。2011年3月のエコポイント終了と、2011年7月の地デジ移行一段落による、需要の急激な縮小に対処できなかったことが敗因です。

○安定した商売に必要なこと
商売は、商品の売れ行きが、最初だけ勢い良く、急激に低下するようでは継続できません。需要は、不安定であるより、安定している方が良いに決まっています。コカコーラやマクドナルドが繁栄し続けるのも、飲食という永続的かつ安定的な市場を事業の対象としているからです。北米の自動車市場が巨大でありながら安定してるのも、保有台数2億4千万台からの買い替え需要が恒常的に存在するからです。日本におけるテレビ製造・販売も、新規設置より、買い替え需要を狙って行く方が、生産設備の稼働率を上げることができ、事業は安定すると言えます。

○政府が実施した事
ところが政府は「エコポイント」などと称して、デジタルへの移行を促進しました。各メーカーは、急増する需要に対応し工場を増設し生産能力を拡大したため、デジタルテレビが急速に行き渡り、生産設備の稼働率を大幅に低下させてしまいました。これでは工場を安定的に稼働させることはできず、雇用の増加も望めません。シャープ社としては、政府がもたらす尖鋭な需要より、自然に喚起される平穏な需要の方が生産・販売計画を立てやすく、生産設備をより長期に有効活用できたはずです。

経済産業省及び総務省は、景気対策等を目的としてエコポイントや地デジ移行の政策を実施しましたが、需要の先食いを喚起しただけで、結果として製造業の経営をより不安定なものにしました。行政とは、私達の生活に関する諸問題を解決するではなく、私達に災いをもたらす組織と言えます。

(おしまい)
シャープ株式会社 2011年10月27日 平成24年3月期 第2四半期 決算補足資料(連結)

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