2011年10月30日日曜日

国民皆保険の嘘

日本の国民健康保険制度のことを「『皆保険』を実現し世界一の保険制度」と豪語する人がいます。しかし、そう言う方は、実は「保険」そのものを理解していないと言えます。


そもそも「保険」とは何でしうか?

保険(ほけん、insurance)は、偶然に発生する事故(保険事故)によって生じる財産上の損失に備えて、多数の者が金銭(保険料)を出し合い、その資金によって事故が発生した者に金銭(保険金)を給付する制度。(ウィキペディア)

1000人の30代から1万円を集め、1年の間に死亡者がでたら遺族らにお金を渡す。1人死亡なら1000万円、2人なら500万円づつ渡す。これが保険の原理です。仮に1000人全員が死亡したら、1万円戻るだけなので制度存在の意味がありません。つまり、受益者は制度加入者のごく一部でければなりません。ほんの一部の人の偶然な不幸のために、多くの人がすこしづつ費用を分担する制度、これが保険です。


高齢化社会ではどうなるか?

ところが、90歳の老人を100人集め、病気や怪我をした場合に医療費を渡すとします。この場合どうなるのか?90歳ともなると恐らく全員なにがしら受診するので、全員が治療費を請求します。負担者がいない状況で、保険制度は成り立ちません。仮に健康な90歳がいても、この方は明らかに取られ損になるので、制度には加入しません。

このことからも分かるように、高齢化に伴い受診率の高い年齢層が多くを占めるようになると、若い世代は取られ損となり制度加入を拒否するようになり、「皆」が加入する制度ではなくなります。そうなると、強制的に保険料を徴収する必要があり、もはや「保険」でなく「税による社会保障」と同じです。実際、「健康保険制度」の財源は「健康保険料」だけでは成り立たず、国庫から負担金が拠出されています。


つまり、高齢化社会において「皆保険」などというものは存在し得ないのです。

(おしまい)

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