しかし、日本のGDP統計と貿易統計を見ると、高度成長期は貿易赤字、「失われた20年」が貿易黒字であり、事実は異なっていることが分かります。
●2012年はどうったたか?(貿易赤字)
2012年の国内総生産の名目値(以下GDP)は474.9兆円でした。主な内訳は、民間消費が289.8兆円(占率58%)、政府最終消費支出が97.6兆円(同19%)、民間企業設備63.8兆円(同13%)でした。純輸出(以下貿易収支)はマイナス9.5兆円(同マイナス2%)でした。2012年、日本は、貿易収支がマイナス(貿易赤字)だったものの、GDPが依然として474.9兆円もあり、輸出立国でなかったことが分かります。
●2012年以前はどうたったか?(貿易収支はほとんど変化しなかった)
では、これまで、GDPと貿易収支はどう推移してきたでしょうか?はたして貿易黒字が高度成長期の主たる要因だったのでしょうか?1960年以降の「GDP」と「貿易収支」「輸出総額」「輸入総額」をまとめてみました。次のグラフを見ると、年々、輸出の拡大とともに、輸入も拡大していたことが分かります。結局、GDPの拡大とは裏腹に、輸出から輸入を引いた貿易収支はほとんど変化していなかったことが分かります。日本は、2012年以前もずっと輸出立国でなかったことが分かります。
●貿易収支のGDPへの寄与度はどうか?(GDPに占める貿易収支の割合は3%以下)
1960年以降の「GDPに占める貿易収支の割合」と「GDPの伸び率」をまとめてみました。「GDPに占める貿易収支の割合」を見ると、貿易収支は、高度成長期(1970年まで)に、マイナスか0%ぐらいでありGDPに全く寄与していなかったことが分かります。また、バブル期の1986年にピーク(3%)に届いた後、バブル崩壊以降は一貫してブラスでした。経済低迷で失われた20年こそ、貿易収支が輸入減少によりようやくGDPに寄与したと言えます。(と言っても全体のわずか2〜3%です。)このグラフからも、日本は、高度成長期の頃からして輸出立国ではなかったことが分かります。
●何が日本の景気を左右しているのか?
これまで見てきたとおり、貿易収支は、輸出入で均衡するため、日本のGDPにほとんど影響してこなかったと言えます。ならば、昨今、日本の景気が低迷している原因は、何でしょうか?私は、日本の一人当たりのGDPが世界平均に追いつき(参考1)、そこに加えて人口の伸びが止まったこと(参考2)と考えています。
「輸出立国」と聞いて、日本のことを外貨をどんどん稼ぎ大幅な貿易黒字を達成しなければならない国と考えているのであれば、それは誤りです。
(追伸)
純輸出の累積を見ると、1950年から1980年までは、マイナス1 兆円の輸入超過でした。一方、1981年から2012年までが、260兆円の輸出超過になりました。つまり、高度成長期は貿易赤字国、「失われた20年」は貿易黒字国でした。貿易黒字でGDPをプラスにするという考え方は間違っていると言えます。
●(参考)
内閣府ホーム 国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額 名目暦年
世界銀行のGDPより (constant 2000 US$を1$110 円として円に換算)
財務省貿易統計 年別輸出入総額(確定値)
(おしまい)
関連ページ
日本経済低迷の真相(世界の人口とGDP)
日本経済低迷の真相(日本の人口とGDP)
「輸出立国」と聞いて、日本のことを外貨をどんどん稼ぎ大幅な貿易黒字を達成しなければならない国と考えているのであれば、それは誤りです。
(追伸)
純輸出の累積を見ると、1950年から1980年までは、マイナス1 兆円の輸入超過でした。一方、1981年から2012年までが、260兆円の輸出超過になりました。つまり、高度成長期は貿易赤字国、「失われた20年」は貿易黒字国でした。貿易黒字でGDPをプラスにするという考え方は間違っていると言えます。
●(参考)
内閣府ホーム 国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額 名目暦年
世界銀行のGDPより (constant 2000 US$を1$110 円として円に換算)
財務省貿易統計 年別輸出入総額(確定値)
(おしまい)
関連ページ
日本経済低迷の真相(世界の人口とGDP)
日本経済低迷の真相(日本の人口とGDP)
確かに今まで常識と思っていた輸出立国はかなりバイアスのかかった考え方と実感。 ただし、今までの純輸出の累積は貿易統計をみると1950年から2012まででなんと260兆円にもなります。(ちなみにピークは2010年の270兆円)、年次では些細な均衡差にしか感じられない輸出額ですが積もり積もって260兆円ともなると、やはり世界から労働の対価として日本はこれだけの”富”を蓄積したと言えるのではないかと思うのです。
返信削除特に80年代から純輸出額は平均して10兆円を超え続け、それが2007年まで続いたわけでその間に膨大な富の蓄積が行われました。その富がGDPの成長にどれだけ寄与したかは考察が必要ですが、一概に輸出立国が”嘘”であるというのは早計かとも。
ご意見ありがとうございます。
返信削除純輸出の累積をよく見ると、面白い事が浮かび上がってきます。日本の貿易は、高度成長期だった1950年から1980年まで、累計が-1 兆円の輸入超過でした。一方、低成長と「失われた20年」となった1981年から2012年まで、累計が260兆円の輸出超過になりました。この数字だけを見ればむしろ、輸入国だったころに高度成長を成し遂げたにもかかわらず、輸出立国という誤った政策を実行したために「失われた20年」に陥ったとも言えます。
為替変動相場制の今、貿易によって富を蓄えるという考え方こそが、誤った常識かもしれません。
これは全然違うと思う。デフレの分析もまったくだめ。もうすこし基本的なことを学ぶべきやと思う。
返信削除コメントありがとうございました。
削除なにがどう違うのか、分析のどこがダメなのか分か、明示されていないため評価のしようがありません。
日本が内需依存国であることをわかりやすく説明してくださってありがとうございます。
返信削除ただ日本の景気が低迷している一番の原因はバブル崩壊後のながいデフレにより国民意識の中に貯蓄志向が高まったことであると感じました。
人口減少も一因であるかもしれませんが、需要が減ること=供給が減ることでもあるのでは
ご意見ありがとうございます。
削除ご指摘のとおり、日本の景気低迷は国内需要が減少しているためです。その原因の一つとして物価安への期待もあります。
ところで、その国内需要の減少や物価安への期待が生じるの原因は、供給の飽和および人口増加の頭打ちにあります。つまり、国内需要が減少する根本の理由は、供給が飽和しているなかで国内の人が増えないためです。