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2014年4月12日土曜日

交易条件の低下について 〜交易条件の推移から見る、貿易立国、輸出立国の真実〜

輸出ドライブにより国内経済を牽引できると考える経済学者や経済評論家にとって、「交易条件」(貿易取引における条件)はとても大きな関心ごとです。昨今の日本経済低迷の原因を「交易条件」の悪化で説明する評論家もいます。今回は、日本の「交易条件」の推移について世界銀行のデータを基に算出し考察しました。

◯「交易条件」とは
実質賃金と交易条件の悪化に関するメモ」によると、「交易条件」とはどれだけ有利に貿易を行えているかを示す指標であり、「GDPデフレータと消費者物価の比の変化」を見ることで「交易条件の変化」も見ることができるとのことです。なぜなら、GDPデフレーターおよび消費者物はいずれも国内の物価指数ではあるものの、前者は輸出物価を含めて(輸入物価は含めず)、後者は輸入物価を含めて(輸出物価は含めず)算出することから、両物価指数の比の変化が輸出入物価の比の変化に比例すると考えられるからです。

◯GDPデフレーターおよび消費者物価指数の推移
そこで、GDPデフレーター(GDP deflator)および消費者物価指数(Consumer Price Index)の両データをグラフにしてみました。なお両指数データに対し1994年が100となるよう調整を加えました。興味深いことに、1994年まで両指数とも上昇したものの、1995年以降GDPデフレーターは低下している一方で消費者物価指数はあまり変化していません。
このことから、1995年以降、輸出価格は低下するなかで輸入価格は高止まりしていたことが分かります。つまり、一見、貿易の条件が悪化したように見えます。(注意。1994年で線が交差していますが、物価が逆転したということではありません。)



◯GDPデフレーター(輸出物価)と消費者物価指数(輸入物価)の比
つぎに、輸入物価と輸出物価の比を見るため、消費者物価指数に対するGDPデフレーターの「比」の推移をグラフにしました。グラフを見ると、比が1973年以降一貫して低下しています。つまり、輸出物価は輸入物価に対し相対的に1973年から下落し続けているということを見てとれます。交易条件を悪化させる原因が1973年に発生したとと考えられそうです。これは、上記のグラフからだけでは分からなかったことです。


◯日本で1973年に何があったか?
1973年日本は、外国為替における交換レートをそれまでの固定相場制度から変動相場制度に移行しました。以来、日本の為替レートは、政府ではなく市場で決まるようになりました。

◯結論
つまり、「GDPデフレータと消費者物価の比の変化」に着目するとこで「交易条件の変化」も見る事ができるとするならば、1973年日本は為替変動制への移行により交易条件を悪化させることを選択し輸出立国であることを捨てたと言えます。
また、今回の調査は、以前に投稿した輸出ドライブに対する否定的な考え方「日本が輸出で経済成長できない理由」を裏付ける結果になりました。
(おしまい)

世界銀行 
http://www.worldbank.org

GDPデフレーター(GDP deflator)とは
ある国(または地域)の名目国内総生産(GDP)から実質GDPを算出するために用いられる物価指数である。(ウィキベディアより)

消費者物価指数(Consumer Price Index)とは
消費者が実際に購入する段階での、商品の小売価格(物価)の変動を表す指数。(ウィキベディアより)










2014年3月22日土曜日

経済成長期においては、貿易収支が赤字になる 

日本の経済が貿易黒字によって成り立っていると考える経済論者は、昨今の貿易赤字を問題視しています。しかし、貿易統計を見ると、高度経済成長期においては貿易赤字失われた20年こそ貿易黒字だったことが分かります。もし貿易収支が日本の経済に影響すると考えるなら、貿易赤字こそが日本の経済成長にとって「善」ということになります。
実際のところは、国内経済が拡大することで、国内消費の拡大とともに輸入も拡大し、結果として貿易収支も赤字になると考える方が自然です。貿易黒字はその逆です。つまり、貿易収支とは国内経済の結果を反映したものであると言えます。

(おしまい)




2014年2月10日月曜日

少子化の原因

2月10日のNHKのクローズアップ現代によると、出生率低下の原因として、「所得の減少や育児環境が整っていないことが上げられている」とのことでした。しかし、事実は異なっています。

世界銀行のデータをもとに、日本、中国、インドを対象に出生率の推移を調べグラフにしました。グラフを見て分かることは、いずれの国においても、出生率は国の成長とともに低下しているということです。つまり、収入の増加とともに低下したと言えます。日本を見ると、高度成長期のころから既に出生率の低下が始まっていました。




出生率が低下した真の理由は、裕福になり「子供を必要としなくなったから」と言えます。(おしまい)

(参考)
データを見て分かる「真の矢」〜常識を覆す「少子化対策」とは
http://kazukat.blogspot.jp/2013/07/blog-post.html


ps.NHKは、出生率が低下する原因を証跡を提示することなく「所得の減少や育児環境が整っていないこと」と報じました。何かの意図があったものと考えています。

2014年1月19日日曜日

生産性を上げても経済成長できない理由

報道などを見ていると、経済論者の多くは、経済規模が拡大しないなか、生産性を向上することで「国民1人あたりの所得」の伸展が可能と考えているようです。それは、少子化による人口減少が明白な現状において、尤もらしい意見です。ところが、私達は、生産性の劇的な向上により食料を10倍得たとしても食べきれそうにもありません。はたして、私たちは、本当に生産性の向上により所得を伸展させることが可能でしょうか?



国内総生産に関する基本的な原則
マクロ経済学の教科書では、経済規模である国内総生産(以下GDP)に関し、「三面等価の原則」により以下の等式が成り立つとしています。

 【三面等価の原則】

 生産面のGDP = 支出面のGDP = 分配(所得)面のGDP

つまり、経済規模は、人々の作る物やサービスによる生産、人々の購入にともなう支出、人々に分配される所得、いづれの面から見ても金額が同じだということです。そのことは、お金を支払う人がいるからこそ物やサービスが生産され利益を分配できると考えられることからも、容易に理解できます。




◯「国民1人あたりの所得」の伸展とは何か?
ところで、上記の式を人口で割ると以下のようになります。

 1人あたりの生産 = 1人あたりの支出 = 1人あたりの分配(所得)


式を見て分かることは、「国民1人あたりの所得」」は「国民1人あたりの支出」によって裏付けられていることです。見方を変えれば、「国民1人あたりの所得」を伸展させることは、「国民1人あたりの支出」を拡大させるということです。つまり、国民全員が支出を抑えつつも所得を増やすことは不可能なことです。また、ロボット化などにより数量ベースでの生産性を上げたとしても、支出が増えない限り、物の単価を下げるだけであり所得は増えないということです。




政治家は、国民の「所得を増やします」と言っていますが、裏を返せば国民の「支出を拡大します」と言っているのです。国民所得は、支出を拡大することで増えるのです。人口増加が止まり支出も拡大しない状況において、生産性を向上することで国民1人あたりの所得の伸展させるとの考え方は、間違っています。

(おしまい)

2013年9月22日日曜日

日本が輸出で経済成長できない理由 〜「貿易黒字が善」という考えの間違い〜


多くの経済論者は、貿易収支に関し「黒字を善」「赤字を悪」と受け止めています。そのため、新聞やテレビは、「貿易赤字により富が流出している」と報道しています。しかし、冷静に考えると、「為替」による富の移転はできないため、その考え方が間違っている事に気づきます。

◯極端な例を仮定し具体的に考えてみます。
ある小国があり、人口はわずか1万人、資源は豊富にあり、輸入は不要な状況とします。その小国のある企業が、デジカメを生産し販売を計画します。この企業が生産ラインのロボット化に成功して100万台生産できました。しかし、国内において、販売台数は1人に1台販売できるとしても1万台までしか見込めません。売上高も1台あたり10万円なら10億円です。そのため輸出により利益を伸ばしたいと考え、生産余剰の99万台をめでたくアメリカで1台あたり1千米ドルで売りさばき、9億9千万米ドルを得たとします。

◯この小国の企業は、はたして儲かったのでしょうか。
輸入ゼロの国の国民は、海外で買い付けをしないため、海外通貨を必要としません。そのためそのような国において、外国為替取引が成立せず、輸出企業は海外通貨を国内通貨に換金できません。つまり、この企業が手にした9億9千万米ドルは、国内において、価値のない紙切れにすぎません。アメリカへの輸出は、この企業の利益に貢献しないのです。働き損だったことが分かります。以上を一般化すると、企業は、輸出超過による利益を、外国為替取引に制限されることから得られないことが分かります。

◯なぜこんなことが起こるのでしょうか?
端的にいうと、各国が通貨の交換に際し通貨価値を「変動制」にしてしまったからです。そのため、輸出により得られる対価の上限額が輸入額に制限されるのです。

つまり、変動制の外国為替取引を採用した国において、輸出額は輸入額に制限されるため、貿易収支を「黒」にできません。「通貨」による富の移転はできないのです。できないこと(貿易黒字)を「善」とする考えは、そもそも間違いといえます。

ps.日本の貿易収支は、8月統計値で1兆円近くの赤字でした。しかし、GDP(500兆円)からみると、わずか0.2%の値であり誤差と言えます。貿易収支云々という議論は、無意味です。
(参考) 貿易統計 
     http://www.kanzei.or.jp/toukei/statotal.htm

(おしまい)

2013年7月8日月曜日

データを見て分かる「真の矢」〜常識を覆す「少子化対策」とは〜 出世率低下の原因

 前回は、OECD諸国においては「人口増加」が経済成長の要であることを示しました。今回は、「少子化対策」について考えてみます。世界のデータを見ることで、少子化対策に成功している国々の「驚きの事実」を読み取ることができます。なお、今回もデータを世界銀行より取得しました。

 最初に、生まれてきた乳幼児への対応状況を見てみます。世界各国における「5歳未満児の死亡率」と「1人あたりのGDP」の相関をグラフにしました。グラフを見ると「1人あたりのGDP」が高い国ほど「5歳未満児の死亡率」は低いことが分かります。これは、当然のこととして、豊な国ほど医療が充実しているためと考えられます。日本は、乳幼児に対し世界でトップクラスの医療を提供しているようです。乳幼児への対応に関しては問題なさそうです。


 次に、「女性1人当たりの出産人数」(以下「出生率」)を見て行きます。
まず、「出生率」と「5歳未満児の死亡率」の相関をグラフにしました。「5歳未満児の死亡率」の高い国では「出生率」も高く、逆に「5歳未満児の死亡率」の低い国では「出生率」も低いことが分かります。これは、自然の動物にも見る事のできる、種を保存するための自然な法則と理解できます。

 


 さらに、「出生率」と「1人あたりのGDP」の相関をグラフにしました。「1人あたりのGDP」の高い国において「出生率」が低くなる傾向を見て取れます。これは、これまで見てきたことから、豊かな国において、医療サービスの発達により乳幼児の死亡率が低下し、自然法則により出生率も低下したためと考えられます。つまり、経済発展にともなう「出生率」の低下は、避けがたい自然の摂理のようです。




 ここで、分析対象を「OECD諸国」に絞って見てみます。
まず、「出生率」と、「5歳未満児の死亡率」や「1人あたりのGDP」の間の相関図です。面白いことに、このグラフには、「全世界」を対象に見た場合のような相関がありません。イスラエルは、「5歳未満児の死亡率」や「1人あたりのGDP」が日本と同程度にも関わらず、「出生率」が「3」を超えています。何か少子化対策につながるヒントがありそうです。



 そこで、様々な項目について「出生率」との相関を調べたました。次のグラフは、「出生率」と「移民受入人数(人口比)」の相関図です。驚いた事に、「移民」を多く受け入れた国ほど「出生率」も高い傾向にあります。 

 ここで一つ気になる事は、スペインなどは、移民を多く受け入れていながら「出生率」が低迷していることです。しかし、これにも原因がありました。スペインは、1960年ごろ日本より移民の受け入れが少ない国でした。2000年頃から本格的に移民を受け入れるよう変わったため、まだ経過が浅く「出生率」への影響も現れていないと考えられます。

●まとめ
 経済発展にともなう「出生率」の低下は、先進国共通の悩みであり、避けがたい自然の摂理のようです。そのようななか、「移民政策」は、一般的には「人口増加」対策と受け止められていますが、「出生率」対策にも有効だと言えそうです。

 追伸 生物は、常に変化する地球環境において「多様性」を確保することで生きながらえてきました。そのため、異なる種の受け入れは、「交配率」を高め「多様性」を確保するための手段ならば、自然の摂理として必要なことになります。私達日本人も、生物の一種であるため、「移民の受け入れ」による「多様性の確保」という自然界の掟を守らなければならないのかもしれません。
(おしまい)





 



2013年7月7日日曜日

経済成長のための「真の矢」とは 〜世界各国のGDP統計から分かること〜

 政府関係者は「金融の緩和」および「政府支出の拡大」によって日本の経済成長を取り戻そうと尽力されています。しかし、以前に「日本経済低迷の真相」で示した通り、経済学者や政府関係者は事実を見誤っています。

 OECD諸国における「国内総生産(以下「GDP」)」と「人口」の相関を改めてグラフにしました。グラフを見ると、各国は同一線上に位置し「GDP」と「人口」の間にある強い相関を読み取ることができます。
 特に先進7か国は、同一線上にぴったり位置しています。この線の傾きは先進7か国における「1人あたりのGDP」を意味しています。そして、この線より上に位置する国がないことから、世界各国の「1人あたりのGDP」は「世界共通の限界」で収斂するものと考えられます。(※)
 経済成長を目指すにあたり、経済発展中の国々には「1人あたりのGDP」を高める余地があります。一方で、OECD諸国、特に先進7か国においては、グラフの線を見る限り、「1人あたりのGDP」を高める余地がないため、要が「人口増加」なっていると言えます。

 つまり、日本において経済を成長させるための「真の矢」とは、今後人口の自然減少が分かっているなか、「移民政策」や「少子化対策」による「人口増加政策」です。
(おしまい)
※一部の国が線より上に位置してる原因は、母数が少ないほど統計上の誤差が生じやすいことと考えられます。


※世界各国を対象とした相関のグラフを再掲しました。世界に共通する「1人あたりのGDPの限界」を読み取ることができます。
※データは世界銀行より

2013年4月29日月曜日

日本人も「移住」すべき

日本の景気が低迷する中、私達日本人は何をすべきでしょうか?このまま、政府の負債発行信用力に頼って「空」仕事を求め続けるべきでしょうか?

アメリカでは、ゴールドラッシュの頃、砂金を求めてカルフォニアに人が殺到しました。航空機産業や映画産業が栄えるとロサンゼルスに人が集まりました。自動車産業の発展とともにデトロイトに人が集まり、宇宙開発予算が増えるとヒューストンに人が集まりました。アメリカ人は、生活するため仕事を求めて住居先を変えます。そのため色々と学習もしています。

では、債務危機に陥ったギリシャの国民は何をしているのでしょうか?
失業率の推移を、ギリシャとドイツで比較してみました。

グラフの失業率を見ると、ギリシャでは、2008年から急激に上昇し、直近では25%を超える異常な状態が続いています。一方でドイツでは、一時的にわずかに上昇したものの低下し続け、直近では5%近くまで落ち着いてきました。同一通貨圏内で、この失業率の明暗は驚きです。ギリシャ人は、国内に仕事がないものの居座り続けているようです。

仕事のない廃れ行く地域に人は集まりません。結局、人口も増えず、需要も喚起されません。グラフを見て分かることは、「ギリシャ人は、さっさとドイツ語でも勉強しドイツに仕事を求めて移住すべき」ということです。

ひるがえって、日本では、どうでしょうか?政府は、「仕事(需要)が不足している」ことから、「穴を掘って埋める」ような公共工事などを毎年30兆円の規模で行なってきました。今や支出を、100兆円にもなるものの、止めると失業者が溢れるため、モルヒネのように続けなければなりません。政府は、「真」の仕事にありつけない人のために、大規模に「空」の仕事を作り、無駄な投資をしているとも言えます。

でも本当は、日本人も、そのような政府に頼るのではなく、アメリカ人同様、きちんと勉強し仕事のある地域や外国に「移住」するべきかもしれません。
(おしまい)

2013年4月27日土曜日

輸出立国の嘘(日本のGDP統計内訳から分かること)

多くの日本人は、日本の事を「輸出立国」と教わり、貿易黒字こそが日本の経済を支えていると信じています。著名な経済評論家も同様です。
しかし、日本のGDP統計と貿易統計を見ると、高度成長期は貿易赤字、「失われた20年」が貿易黒字であり、事実は異なっていることが分かります。

●2012年はどうったたか?(貿易赤字)
2012年の国内総生産の名目値(以下GDP)は474.9兆円でした。主な内訳は、民間消費が289.8兆円(占率58%)、政府最終消費支出が97.6兆円(同19%)、民間企業設備63.8兆円(同13%)でした。純輸出(以下貿易収支)はマイナス9.5兆円(同マイナス2%)でした。2012年、日本は、貿易収支がマイナス(貿易赤字)だったものの、GDPが依然として474.9兆円もあり、輸出立国でなかったことが分かります。

●2012年以前はどうたったか?(貿易収支はほとんど変化しなかった)
では、これまで、GDPと貿易収支はどう推移してきたでしょうか?はたして貿易黒字が高度成長期の主たる要因だったのでしょうか?1960年以降の「GDP」と「貿易収支」「輸出総額」「輸入総額」をまとめてみました。次のグラフを見ると、年々、輸出の拡大とともに、輸入も拡大していたことが分かります。結局、GDPの拡大とは裏腹に、輸出から輸入を引いた貿易収支はほとんど変化していなかったことが分かります。日本は、2012年以前もずっと輸出立国でなかったことが分かります。


●貿易収支のGDPへの寄与度はどうか?(GDPに占める貿易収支の割合は3%以下)
1960年以降の「GDPに占める貿易収支の割合」と「GDPの伸び率」をまとめてみました。「GDPに占める貿易収支の割合」を見ると、貿易収支は、高度成長期(1970年まで)に、マイナスか0%ぐらいでありGDPに全く寄与していなかったことが分かります。また、バブル期の1986年にピーク(3%)に届いた後、バブル崩壊以降は一貫してブラスでした。経済低迷で失われた20年こそ、貿易収支が輸入減少によりようやくGDPに寄与したと言えます。(と言っても全体のわずか2〜3%です。)このグラフからも、日本は、高度成長期の頃からして輸出立国ではなかったことが分かります。


●何が日本の景気を左右しているのか?
これまで見てきたとおり、貿易収支は、輸出入で均衡するため、日本のGDPにほとんど影響してこなかったと言えます。ならば、昨今、日本の景気が低迷している原因は、何でしょうか?私は、日本の一人当たりのGDPが世界平均に追いつ(参考1)、そこに加えて人口の伸びが止まったこと(参考2)と考えています。

「輸出立国」と聞いて、日本のことを外貨をどんどん稼ぎ大幅な貿易黒字を達成しなければならない国と考えているのであれば、それは誤りです。

(追伸)
純輸出の累積を見ると、1950年から1980年までは、マイナス1 兆円の輸入超過でした。一方、1981年から2012年までが、260兆円の輸出超過になりました。つまり、高度成長期は貿易赤字国、「失われた20年」は貿易黒字国でした貿易黒字でGDPをプラスにするという考え方は間違っていると言えます

●(参考)
内閣府ホーム  国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額 名目暦年
世界銀行のGDPより (constant 2000 US$を1$110 円として円に換算)
財務省貿易統計  年別輸出入総額(確定値)
     
(おしまい)

関連ページ

日本経済低迷の真相(世界の人口とGDP)
日本経済低迷の真相(日本の人口とGDP)


2013年4月2日火曜日

輸出立国の嘘(貿易赤字も健全)



多くの人は、日本のことを、貿易黒字によって経済が成り立つ、「輸出立国」と考えています。つまり、輸出総額が輸入総額を大幅に上回れば、お金がじゃぶじゃぶ国内に流入すると考えています。そのため、貿易黒字を善、貿易赤字を悪と受け止めています。多くの著名な評論家や経済学者も同様です。
しかし、そう考える方は、為替取引と国内通貨量の簡単な関係を理解していません。実際は、輸出がいくら伸びても、日本国民はお金持ちになれません。

そもそも、輸出立国の信者は、「輸出で得た外貨が国内にそのまま流入する」ことを前提に考えています。しかし、海外旅行経験者であれば、誰しもこの前提に「はて?」と思うはずです。

具体的に自動車を輸出する事例を考えてみます。自動車メーカは、アメリカで自動車を売ることにより、対価として当然アメリカの通貨「ドル」を受け取ります。しかし、彼らはその「ドル」を、日本国内で利用できないため、為替取引により「円」に両替する必要があります。この為替取引により、自動車を売ったことの「対価」を初めて日本国内で利用できます。輸出で得た外貨は国内で流通しません。

重要なことは、為替取引により、自動車メーカが円を取得し円の保有を増やす過程で、金融機関など為替取引相手が円を手放し円の保有を減らすことです。つまり両者の円保有の総和は変化しない点です。ここで簡単な法則の存在に気がつきます。それは、「輸出で外貨を得ても、日本で流通する円の量は変化しない」ことです。


輸出によって得られるものは、外貨であり、外国の物や外国債を購入するための権利です。つまり、輸入を差し引いて余るほどの外貨を稼いでも、円建ての経済には寄与しません。単に輸出を拡大しても景気は良くなりません。

これからの日本は、輸出で外貨(外国債)を貯めることばかりせず、これまでの外債を活用して外国からの輸入を拡大し収支不均衡を是正するべきです。昨今の貿易赤字は健全と言えます。
(おしまい)

            ※図は時事ドットコムより

2013年2月18日月曜日

TPP参加を踏まえた準備の必要性

昨今、TPP交渉参加の是非を巡り、広く国民の間で議論されています。私達は、これまでの政策を正しく認識した上で、今、何をすべきか考えることが必要です。


多くの日本人は、日本の経済発展を、技術進歩による国際競争力向上と工業製品の輸出拡大によるものと考えています。しかし、日本政府がつい最近まで輸入制限(保護貿易)の政策を取り続けていたことをそれほど認識していません。

アメリカは、1900年代までは、輸入品に対し30〜40%もの関税率を果たし、輸入を大きく制限していました。ところが、1900年から関税率を徐々に引き下げ、第二次世界大戦以降に平均10%未満、2010年には平均1.3%まで軽減し、自由貿易主義へと変遷しました。

一方日本は、今や日本が世界に誇るエレクトロニクス、自動車、カメラでさえ、輸入関税率を戦前は100%、戦後も40〜30%かけ続け保護してきました。それらの関税率を完全に撤廃したのは1970年後半からです。1980年代の日米構造協議などにより自由化の道をさらに歩み続けていますが、未だに農業はもとより金融、医療をはじめ多くの分野で参入を規制し自由化していません。日本の産業振興は、技術の進歩とともにありましたが、輸入制限・外資参入制限政策によりグローバル競争から守られてきたことによるものです。

TPP協定は、どのようなものか具体的な内容が明示されていないものの、国内の市場を一層自由化する方向にあます。保護産業の企業に対し、競争の場を国内から世界に追いやり、厳しい経営を迫るものと予想できます。保護産業の関係者は、自動車産業や精密機器産業のように、グローバル化の波に備えた技能の体得が必要です。
(おしまい)

参考
Wikipedia Tariffs in United States history 
 http://en.wikipedia.org/wiki/Tariffs_in_United_States_history

・財務省 主要品目の関税率の推移  
 http://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou/g486/486_03.xls 



2013年1月1日火曜日

思いつき政策からの脱却


政策立案者(政治家や官僚)は、経済学の支援なしに政策を立案できません。経済学は私達の生活に大きく影響していると言えます。しかし、今日の経済学は社会学であり科学ではありません。困難な今こそ、より科学的な見地に基づく経済理論の構築と政策判断が求められています。

科学者と経済学者のデータに対する接し方を見比べると、彼らの取り組みの違いに気づきます。

科学者は、仮説を提唱した後、実験によってその仮説を証明しようとします。実験による裏付けを得ることで、仮説が正しかったと判断します。予想に反した実験データを得た場合、実験方法や仮説を間違えていたのではないかと自問します。目の前のデータを素直に直視し、時には仮説を修正します。ノーベル賞を受賞した山中教授も「予期していなかったデータこそ重要」と話していました。科学は、そういった地道な自問を繰り返し、仮説を一つ一つ積み重ね、火星に探査機を送ったり遺伝子から細胞をつくったりするなど発展し、今日に至りました。

一方で経済学者は、自分たちが若い頃に習った仮説を是とし、考え方を変えようとしません。データに対しても、説明のつくデータに着目し、説明のつかないデータには目もくれません。データが示す事実を直視しようとしません。そのため、マクロ経済に関し、100年の議論を経た今でも大きく2手に分かれており、入門書の内容ですら意見が一致していません。マクロ経済学も今日までほとんど進歩していません。アメリカ大統領選挙において、候補者や有識者は醜い論争を1年間繰り広げましたが、米国民は何も得ていないように見受けられます。

経済学の観察対象とするデータは膨大にあります。経済学者アダムスミスが「見えざる手」を提唱した18世紀には、コンピュータが未だありませんでした。これまでは、それらのデータを分析することが不可能だったかもしれません。しかし、コンピュータ技術の発達した今日においては、誰でもそれらのデータを簡単に分析できます。

困難な今こそ、政治家および評論家による思いつき、学者および官僚による誤った考えから脱却し、より科学的な見地に基づく経済理論の構築と現実的な政策判断が必要です。

アダム・スミス

(おしまい)

2012年11月12日月曜日

日本経済低迷の真相

日本のGDPは1995年をピークに下降し、日本経済は17年間も低迷しています。政策決定者(政治家・官僚)や経済学者・評論家ら有識者は、なぜ、17年間も問題に対処できないのでしょうか?現状をどう見ているのでしょうか?彼らは正しいのでしょうか?
私は、有識者が現状認識を間違えていると考えています。

●有識者の現状認識と対応案
有識者達の意見は、大きく2つに別れ一致していません。

①需給ギャップ説
日本の経済は、需要と供給にギャップがあるため、需要の不足により低迷している。そこで、政府なら、財政出動することで需要を喚起でき、成長起動を取り戻せる。
(参考)内閣府発表 現実GDPと潜在GDの推移

②実質金利高騰説
日本の経済は、物価が下がりデフレ状態にあるため、実質金利の上昇により低迷している。そこで、日銀なら、金融量的緩和を仕掛けることで実質金利を低下でき、成長起動を取り戻せる。
(参考)内閣府発表 名目金利・実質金利の推移

●これまで、実際はどうだったか?
歳出(対GDP比)の推移を見ると、1995年以降、歳出はそれまでと同様に増加しているものの、GDPは伸びていません。つまり、財政出動しても、国債残高が増えるだけで、GDPに影響しません。このことは、有識者の認識と一致しません。
(参考)世界経済ネタ帳 歳出(対GDP比)の推移
    財務省 一般会計歳出総額推移

マネタリーベースと実質GDPの関係を見ると、金融緩和したもののGDPは上昇していません。このことも、有識者の認識と一致しません。
(参考)内閣府発表 マネタリーベースと実質GDPの関係

有識者の見立ては正しくないようです。

●真相は何か?
次の図は、国別の「GDPと人口の相関」をグラフにしたものです。当たり前のことですが、人口が大きいとGDPも大きく、人口が小さいとGDPも小さいことを見て取れます。注目点は、最恵のOECD・非OECD諸国が、同一線(点線)上にあることです。点線を超えて上側に位置する国はありません。つまり、国民1人当たりのGDPには、世界共通の限界があるということです。ここで、この点線を「成長限界線」と定義します。



●高度成長のころはどうだったのか?
次の図は、日本がまだ高度成長期だった1960年当時の、GDPと人口の相関を示したグラフです。日本は「成長限界線」(点線)の下に位置しています。つまり、日本の生産性は、西洋諸国のそれより低く、人口相応のGDPまで成長する余地がありました。

●何故日本のGDPは伸びないのか?
日本のGDPは、1995年にピークに達し、以後下降し続けています。次の図は、ピーク当時のグラフです。バブル景気の勢いが余って「成長限界線」(点線)を突き抜けていたことが分かります。しかし、最初の図(2008年)にもあるよう、現在は「成長限界線」(点線)に位置しています。つまり、ピーク以降の景気低迷は、日本の国民1人当たりのGDPが最恵国の平均に回帰したことの結果です。


●問題の本質
上記で見たとおり、国民1人当たりの生産性には限界があるため、先進諸国では人口の大小がGDPの大小を決定しています。つまり、日本の景気が世界で突出して低迷している訳ではありません。これまでの景気低迷は、国民1人当たりの生産性が世界共通の上限に達しかつ人口も増えない中で、当然の成り行きです。
多くの有識者は、経済を成長させるため、政府支出の拡大や金融の緩和により国民1人当たりの生産性を向上できると考えています。しかし、その考え方は間違えていると言えます。
(おしまい)




2012年9月30日日曜日

経済学とは宗教

現代社会において、多くの判断が経済学者の見解などによって方向づけられています。政治家や官僚は、私たちの生活に関わる諸問題の政策を経済学者の助言なしに決定することができません。しかし、ここで注意しなければならないことは、経済学は真理を追求する「科学」のような学問ではないということです。
多くの政治家や官僚は経済学を「科学」と同等の学問と誤解しているようですが、私は経済学のことを「人々を統治するための宗教」と考えています。

◎「科学」とは何か?
この問は、とても哲学的です。私は、
 ①反証可能性を持ち、誰でも反証可能な仮説
 ②厳しい反証実験を耐え抜いた仮説ほど信頼できる
と考えています。

例えば、物が地面に落下することに関しては、以下の式で表せます。
 落下速度(メートル/秒) = 9.8 × 時間(秒)
 落下距離(メートル)   = 9.8 × 時間(秒) × 時間(秒)

上記の式は、落下する物体の重さを考慮していない点や、係数を9.8に固定していることに関し、反証できそうです。また、実際に色々な物を落とせば確認できるので、誰にでも反証実験できます。ところが、実際、誰が実験をやっても同じ結果になり、同じ結論に帰着します。上記式を一層裏付けることとになり、結論の信頼性が増します。これこそが「科学」です。逆に、どのような理論でも、「~という、私の主張は絶対です」と述べるだけだったり、実証せず第三者に反証の機会も与えない場合、科学的と言えません。

◎経済学はどうか?
たとえば、慶應義塾大学経済学部の1年生は、「経済学入門」を教科書として勉強しています。この本では、私たちの経済活動を、定性的な理屈とともに、数式やグラフによって数学的に説明しています。「家計の行動」という章を見ると、需要曲線に関する記述があります。考えをグラフにすると以下の図のとおりです。

グラフが示していることは、価格が下がれば買う人は増えるものの、価格が上がれば買う人は減るという考え方です。これは、ものすごく説得力があり、経済学における最も基本的な教えです。経済学者のみならず経済に関心のある方の間でも常識です。

◎現実はどうか?
ところが、上記のグラフや考え方は、日頃の私たちの購買行動を考えると反証に弱いことが分かります。
例えば、私たちは、iPhone5が出たからといって、価格の下がったiPhone4sを買ったりしません。たとえ買うつもりでも、明日に価格がもっと下がると思えば、明日まで買い控えます。逆に、来週ガソリン価格が上がると思えば、既に価格が高騰していても週末までにガソリンを買い足しに行きます。人の心理から見れば、購買意欲のグラフは下記のとおりです。

これは、経済学の教科書と矛盾しています。

◎経済学とは何なのか?
上記のことからも、経済学とは、一見すると科学的ですが、経済学の教科書にある基礎すら実証していない、理論としてはとても弱い「仮説」であることが分かります。実際、マクロ経済学には「貨幣数量説」や「有効需要説」などいくつもの諸説や派閥が乱立しています。また、お互い、言葉や数式で批判し合うものの、反証(実証)実験をしていません。経済学は「科学」ではなく「社会学」です。
ところが、不思議なことに、経済学には、巧みな言葉と数式・グラフを駆使することで、人々を説得するだけの力があるようです。まるで、人々を統治するための聖書の「教え」のようです。これは、まさに「宗教」と同じです。

つまり、「経済学」とは、人々を統治するための、宗教の一種なのです。

2012年3月4日日曜日

日本経済低迷の真相

日本経済は長いこと低迷しています。
その原因は一体どこにあるのでしょうかか?円高による輸出競争力の低下と言う人もいますが、はたして本当でしょうか?

それを確認するため、先ずは、景気低迷がいつ始まったのか、見ましょう。
アメリカと日本のGDP推移を比較しました。
アメリカは順調に経済拡大してきたにも関わらず、日本経済は1995年から横ばいになっていることが分かります。日本の景気低迷が顕在化したのは1995年と言えます。

円高のきっかけとなったプラザ合意は1885年ですから、為替ではどうもうまく説明できません。

それでは、バブル崩壊が原因でしょうか?日銀が金融引き締めに転じたのは1989年末。翌年の1990年に日経平均株価は9ヶ月で半分まで下がり、バブルが崩壊しました。上記のGDP下落の時期とは少しずれています。バブル崩壊がきっかけとしても、それだけではうまく説明できません。

政変が原因でしょうか?日本新党の細川政権が樹立したのは、1993年です。これも少しずれているように見えます。バブル崩壊以後、自民党も含めて首相が毎年変わってきたことを考えると、政変で景気が低迷したと考えるより、バブル経済崩壊によって政治が安定しなくなったと考える方が自然です。

金融緩和が不十分なのでしょうか?いいえ、バブル崩壊以降、日銀はずっとゼロ金利政策を維持してきました。むしろ経済成長していた時期の方が政策金利は高かかったではありませんか。ましてや、デフレの状況では実質金利を下げることはできません。

次の図を見てください。生産年齢(15歳〜64歳)人口とGDPの推移をグラフにしました。

生産年齢人口は1995年をピークに下落し、景気低迷が始まった年と一致していることが分かります。これは偶然でしょうか?私は、「生産年齢人口の減少」が日本の景気低迷をかなりうまく説明できていると考えます。つまり、働く人が減ったことにより、日本全体の収入の伸びが止まり、日本の長期景気低迷を招いたのです。家庭で働き手が遊びふければ収入は減るのと同じ理屈です。難しい経済理論は不要です。とても分かりやすい考え方です。

バブル崩壊で先に収入が減り、そのため、出生人数も減少したのではないかとの意見もあります。しかし、それではうまく説明できません。生産年齢人口は15歳以上を対象としており、その減少は15年以上前、つまりバブル以前に起因するからです。また、バブル崩壊前後の出生人数は横ばいでした。

これを見る限り、日本の景気が長期低迷に至った原因は、1980年以前から始まった出生率の低下と言えます。

生産年齢人口が減少しているにも関わらず、GDPがかろうじて横ばいになっていますが、政府支出の拡大等によるものです。生産年齢人口が減少している状況で、継続はできないでしょう。人口動態推計から、日本の生産年齢人口は、今後も減少し続けることが分かっています。日本の景気は、今後も更に後退するものと考えています。

(おしまい)