2013年4月27日土曜日

輸出立国の嘘(日本のGDP統計内訳から分かること)

多くの日本人は、日本の事を「輸出立国」と教わり、貿易黒字こそが日本の経済を支えていると信じています。著名な経済評論家も同様です。
しかし、日本のGDP統計と貿易統計を見ると、高度成長期は貿易赤字、「失われた20年」が貿易黒字であり、事実は異なっていることが分かります。

●2012年はどうったたか?(貿易赤字)
2012年の国内総生産の名目値(以下GDP)は474.9兆円でした。主な内訳は、民間消費が289.8兆円(占率58%)、政府最終消費支出が97.6兆円(同19%)、民間企業設備63.8兆円(同13%)でした。純輸出(以下貿易収支)はマイナス9.5兆円(同マイナス2%)でした。2012年、日本は、貿易収支がマイナス(貿易赤字)だったものの、GDPが依然として474.9兆円もあり、輸出立国でなかったことが分かります。

●2012年以前はどうたったか?(貿易収支はほとんど変化しなかった)
では、これまで、GDPと貿易収支はどう推移してきたでしょうか?はたして貿易黒字が高度成長期の主たる要因だったのでしょうか?1960年以降の「GDP」と「貿易収支」「輸出総額」「輸入総額」をまとめてみました。次のグラフを見ると、年々、輸出の拡大とともに、輸入も拡大していたことが分かります。結局、GDPの拡大とは裏腹に、輸出から輸入を引いた貿易収支はほとんど変化していなかったことが分かります。日本は、2012年以前もずっと輸出立国でなかったことが分かります。


●貿易収支のGDPへの寄与度はどうか?(GDPに占める貿易収支の割合は3%以下)
1960年以降の「GDPに占める貿易収支の割合」と「GDPの伸び率」をまとめてみました。「GDPに占める貿易収支の割合」を見ると、貿易収支は、高度成長期(1970年まで)に、マイナスか0%ぐらいでありGDPに全く寄与していなかったことが分かります。また、バブル期の1986年にピーク(3%)に届いた後、バブル崩壊以降は一貫してブラスでした。経済低迷で失われた20年こそ、貿易収支が輸入減少によりようやくGDPに寄与したと言えます。(と言っても全体のわずか2〜3%です。)このグラフからも、日本は、高度成長期の頃からして輸出立国ではなかったことが分かります。


●何が日本の景気を左右しているのか?
これまで見てきたとおり、貿易収支は、輸出入で均衡するため、日本のGDPにほとんど影響してこなかったと言えます。ならば、昨今、日本の景気が低迷している原因は、何でしょうか?私は、日本の一人当たりのGDPが世界平均に追いつ(参考1)、そこに加えて人口の伸びが止まったこと(参考2)と考えています。

「輸出立国」と聞いて、日本のことを外貨をどんどん稼ぎ大幅な貿易黒字を達成しなければならない国と考えているのであれば、それは誤りです。

(追伸)
純輸出の累積を見ると、1950年から1980年までは、マイナス1 兆円の輸入超過でした。一方、1981年から2012年までが、260兆円の輸出超過になりました。つまり、高度成長期は貿易赤字国、「失われた20年」は貿易黒字国でした貿易黒字でGDPをプラスにするという考え方は間違っていると言えます

●(参考)
内閣府ホーム  国民経済計算(GDP統計)年次GDP実額 名目暦年
世界銀行のGDPより (constant 2000 US$を1$110 円として円に換算)
財務省貿易統計  年別輸出入総額(確定値)
     
(おしまい)

関連ページ

日本経済低迷の真相(世界の人口とGDP)
日本経済低迷の真相(日本の人口とGDP)


2013年4月13日土曜日

日本は依然として閉鎖的

「グローバル化」が認識されてから随分と年月が立ちました。巷には外国ブランドや横文字が溢れ、外国人やハーフがテレビに出演しているため、日本もグローバル化の波に乗り第二の開国を成し遂げつつあると感じている人も多いと思います。
しかし、私は、日本のことをつくづく「閉鎖的な国」だと感じています。

今日もそれを強く感じる出来事がありました。

渋谷でコーヒーを飲んでいたとき、隣に座っていた韓国人2人に、路線図やiPhoneを見ながら困惑していたため英語で声をかけてあげました。その韓国人が「アシアゲがどこか分からない」と言うので、私が問いただすと彼らの目的地は「スカイツーリー」でした。駅名が分からず困っていたのかと思いきや、彼らのもっていた路線図には、JRのものだったため、メトロや私鉄は省略され「押上駅」が記載されていませんでした。しかも、漢字主体で表記され、駅名に小さなローマ字の記載があるだけでした。また、他の鉄道会社についての注意書きなどいっさいありませんでした。彼らは自分たちが「アシアゲ」を見落としているに違いないと必死に探していたわけでした。
私は、「押上駅」まので行き方を説明し、駅名に関して漢字とローマ字でメモも書いてあげました。

韓国では、日本語、中国語、英語のガイドが町中に溢れています。路線図もとても見やすくできています。また、日本語が、どこに行っても通じます。レストランはもとよりマクドナルドや地元向け量販店ですら通じます。小さな飲食店などは、日本語を話せる人がいない場合でも、少なくても写真付きの日本語メニューが置いてあり、誰でも簡単に注文できます。路上や駅で地図や路線図などを見ていると、必ず誰かが日本語で声をかけ助けようとしてくれます。大学卒業者は皆、英語、中国語、日本語のいずれかを話せます。大学を卒業していなくても、商売する人であれば、外国語を片言で話そうとします。インチョン空港では、飛行機を降りたところの看板の一行目に日本語で「ようこそいらっしゃいませ」と書いてあります。私達外国人を歓迎していることを強烈に感じます。

一方、日本では、外国人向け観光ガイドがどこにあるのか分かりません。外国人向け地図すら町や商店街に置いていません。各鉄道会社の路線図は、駅名や路線名を日本語を主体に表記し、さらに自社の路線しか記載していません。外国人向けの、見やすい、統合したものがありません。小売店では、韓国語や中国語がほとんど通じませんし、英語ですら通じる場所が限られています。道に迷う外人がいても声をかける人はいません。そのため、外国人観光客は、スマホとgoogleマップにより少しは自分で探索できるものの、電池が切れたら孤立してしまいます。成田空港の入国ゲートの看板には、一行目に「お帰りなさい」とだけ日本語で書いてあります。まるで外国人を無視しているようです。

日本を訪れた外国人観光客は、日本のことを、未だに閉鎖的な理解しがたい国と感じているに違いありません。

(おしまい)


2013年4月2日火曜日

輸出立国の嘘(貿易赤字も健全)



多くの人は、日本のことを、貿易黒字によって経済が成り立つ、「輸出立国」と考えています。つまり、輸出総額が輸入総額を大幅に上回れば、お金がじゃぶじゃぶ国内に流入すると考えています。そのため、貿易黒字を善、貿易赤字を悪と受け止めています。多くの著名な評論家や経済学者も同様です。
しかし、そう考える方は、為替取引と国内通貨量の簡単な関係を理解していません。実際は、輸出がいくら伸びても、日本国民はお金持ちになれません。

そもそも、輸出立国の信者は、「輸出で得た外貨が国内にそのまま流入する」ことを前提に考えています。しかし、海外旅行経験者であれば、誰しもこの前提に「はて?」と思うはずです。

具体的に自動車を輸出する事例を考えてみます。自動車メーカは、アメリカで自動車を売ることにより、対価として当然アメリカの通貨「ドル」を受け取ります。しかし、彼らはその「ドル」を、日本国内で利用できないため、為替取引により「円」に両替する必要があります。この為替取引により、自動車を売ったことの「対価」を初めて日本国内で利用できます。輸出で得た外貨は国内で流通しません。

重要なことは、為替取引により、自動車メーカが円を取得し円の保有を増やす過程で、金融機関など為替取引相手が円を手放し円の保有を減らすことです。つまり両者の円保有の総和は変化しない点です。ここで簡単な法則の存在に気がつきます。それは、「輸出で外貨を得ても、日本で流通する円の量は変化しない」ことです。


輸出によって得られるものは、外貨であり、外国の物や外国債を購入するための権利です。つまり、輸入を差し引いて余るほどの外貨を稼いでも、円建ての経済には寄与しません。単に輸出を拡大しても景気は良くなりません。

これからの日本は、輸出で外貨(外国債)を貯めることばかりせず、これまでの外債を活用して外国からの輸入を拡大し収支不均衡を是正するべきです。昨今の貿易赤字は健全と言えます。
(おしまい)

            ※図は時事ドットコムより

2013年2月18日月曜日

TPP参加を踏まえた準備の必要性

昨今、TPP交渉参加の是非を巡り、広く国民の間で議論されています。私達は、これまでの政策を正しく認識した上で、今、何をすべきか考えることが必要です。


多くの日本人は、日本の経済発展を、技術進歩による国際競争力向上と工業製品の輸出拡大によるものと考えています。しかし、日本政府がつい最近まで輸入制限(保護貿易)の政策を取り続けていたことをそれほど認識していません。

アメリカは、1900年代までは、輸入品に対し30〜40%もの関税率を果たし、輸入を大きく制限していました。ところが、1900年から関税率を徐々に引き下げ、第二次世界大戦以降に平均10%未満、2010年には平均1.3%まで軽減し、自由貿易主義へと変遷しました。

一方日本は、今や日本が世界に誇るエレクトロニクス、自動車、カメラでさえ、輸入関税率を戦前は100%、戦後も40〜30%かけ続け保護してきました。それらの関税率を完全に撤廃したのは1970年後半からです。1980年代の日米構造協議などにより自由化の道をさらに歩み続けていますが、未だに農業はもとより金融、医療をはじめ多くの分野で参入を規制し自由化していません。日本の産業振興は、技術の進歩とともにありましたが、輸入制限・外資参入制限政策によりグローバル競争から守られてきたことによるものです。

TPP協定は、どのようなものか具体的な内容が明示されていないものの、国内の市場を一層自由化する方向にあます。保護産業の企業に対し、競争の場を国内から世界に追いやり、厳しい経営を迫るものと予想できます。保護産業の関係者は、自動車産業や精密機器産業のように、グローバル化の波に備えた技能の体得が必要です。
(おしまい)

参考
Wikipedia Tariffs in United States history 
 http://en.wikipedia.org/wiki/Tariffs_in_United_States_history

・財務省 主要品目の関税率の推移  
 http://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou/g486/486_03.xls 



2013年2月10日日曜日

報道改革の必要性


私は、最近、インターネットを介してアメリカの報道番組(配信動画)を見るようになりました。分かった事は、日本の報道番組が、アメリカと比較し貧弱だと言う事です。

日本の多くの報道番組は、時事を単純に伝達しり感情的な意見を述べる程度で、問題解決に向けてほとんど提言していません。その様な番組が多い中で、NHKの「クローズアップ現代」は、時事問題を、幅広く取り扱い、限られた時間の中で専門家を交えて解説するなど深堀りしています。日本の報道番組を一つだけ視聴するとしたら、私なら迷うことなく、NHKの「クローズアップ現代」を選らびます。しかし、その「クローズアップ現代」も、情報源は偏っているように見えます。また、週4回という時間の制約から、1つの時事問題につき1回しか取り扱いません。さらに、問題解決に向けての提言に関しては、予算増加を求める省庁を暗に代弁しているようでもあり、一方的であり、私達に選択肢を提示していません。

ところが、アメリカのWSJ、TIME、PBSなどのは、情報源が多数あり、様々な異なった見方を持つ取材者や専門家を招き、同じ時事を一度のみならず違った角度で何度も取り上げ、問題を深堀し事の本質に迫ります。動画本数も、WSJ1社でさえ1日に10本以上配信しています。また、問題解決に向けては、予算増加の弊害や代替案を問いつめるなど、賛否両論の展開によりメリット・デメリットを明らかにし、視聴者に選択を提供しようとしています。アメリカの報道は、質・量とも明らかに日本のそれよりも上です。アメリカの報道を見ていると、「報道とは何か」を考えさせられます。

日本の報道番組の多くは、単に事象を伝達したり、感情的な意見をのべることが多く、また、問題解決策も一方的です。日本の民主化をより進めるためにも、私達国民に政策選択肢を提示する方向で、見直されるべきです。
(おしまい)

The Wall Street Journal  Live
http://live.wsj.com/




2013年1月14日月曜日

Google Map 「交通情報」の限界

1月14日、東京は大雪に見舞われました。都内の道路は、各所で渋滞しました。首都高速も、方々で「通行止め」や「チェーン規制」により利用を制限されました。こういう時こそ車の運転者は、「交通情報」をリアルタイムに取得したいことでしょう。

「GoogleMap」は、利用者の位置情報を吸い上げることで、独自にリアルタイムの渋滞情報を提供しています。高速道路はもとより一般道を含め、あらゆる道路に対応しています。道路運営側から情報提供を受けていないことの強みです。

しかし、私は、かねてから「GoogleMap」が雪の日に真価を発揮できるか疑問を感じていました。本日、早速、日本道路交通情報センター(JARTIC)の道路交通情報と、Google Map の交通情報を比較してみました。

東京外環道路は、大雪により、「通行止め」になりました。同時刻、JARTICの道路交通情報は「通行止め」を表示しましたが、Google Map の交通情報は「渋滞」しか表示しませんでした。

残念ながら、Google Map の交通情報は、道路運営側の情報と連動していないため、「通行止め」に対応できていないようです。私達は、「通行止め」や「チェーン規制」が実施された場合、日本道路交通情報センター(JARTIC)の提供情報と併用する方が良さそうです。

 ●日本道路交通情報センター(JARTIC)提供の渋滞情報
 東京外環道路に「通行止め(黒色)の表示

Google Map に表示される交通情報
 東京外環道路に「渋滞(赤色や黄色)」の表示(交通止め表示なし)
(おしまい)

2013年1月1日火曜日

思いつき政策からの脱却


政策立案者(政治家や官僚)は、経済学の支援なしに政策を立案できません。経済学は私達の生活に大きく影響していると言えます。しかし、今日の経済学は社会学であり科学ではありません。困難な今こそ、より科学的な見地に基づく経済理論の構築と政策判断が求められています。

科学者と経済学者のデータに対する接し方を見比べると、彼らの取り組みの違いに気づきます。

科学者は、仮説を提唱した後、実験によってその仮説を証明しようとします。実験による裏付けを得ることで、仮説が正しかったと判断します。予想に反した実験データを得た場合、実験方法や仮説を間違えていたのではないかと自問します。目の前のデータを素直に直視し、時には仮説を修正します。ノーベル賞を受賞した山中教授も「予期していなかったデータこそ重要」と話していました。科学は、そういった地道な自問を繰り返し、仮説を一つ一つ積み重ね、火星に探査機を送ったり遺伝子から細胞をつくったりするなど発展し、今日に至りました。

一方で経済学者は、自分たちが若い頃に習った仮説を是とし、考え方を変えようとしません。データに対しても、説明のつくデータに着目し、説明のつかないデータには目もくれません。データが示す事実を直視しようとしません。そのため、マクロ経済に関し、100年の議論を経た今でも大きく2手に分かれており、入門書の内容ですら意見が一致していません。マクロ経済学も今日までほとんど進歩していません。アメリカ大統領選挙において、候補者や有識者は醜い論争を1年間繰り広げましたが、米国民は何も得ていないように見受けられます。

経済学の観察対象とするデータは膨大にあります。経済学者アダムスミスが「見えざる手」を提唱した18世紀には、コンピュータが未だありませんでした。これまでは、それらのデータを分析することが不可能だったかもしれません。しかし、コンピュータ技術の発達した今日においては、誰でもそれらのデータを簡単に分析できます。

困難な今こそ、政治家および評論家による思いつき、学者および官僚による誤った考えから脱却し、より科学的な見地に基づく経済理論の構築と現実的な政策判断が必要です。

アダム・スミス

(おしまい)